渡仏が決まり、まずは単身赴任。家探し中に日本で待機中の妻から、妊娠の知らせがあり、駐在経験がなく、言葉もさることながら、フランスで出産といった不安一杯の生活から始まった。花の都パリに憧れはあったものの、余りにも日本との文化の違いに私達夫婦は戸惑いの毎日であった。早速、家電製品を購入したが、指定の配達日に来ない。電話を入れたら、配達が忙しく、一日延期したと言う。呆れてものも言えない。
若い世代には英語が世界共通語として認識されているが、まだまだ、レストランに入れば、英語よりも多少のフランス語を話すだけでもサービスがよくなる。
かつては、インドシナを植民地としたフランス人は、今でもアジアの人種とは一線を画す人がいるとは聞いてはいたが、自分もアジア人種であることを意識させられる。
先日、パリの暴動がマスコミでクローズアップされたが、友人の多くは車の盗難、スリ、空き巣、ひったくりなどにあい、さまざまな防犯対策に悩まされている。私自身も最近、クレジットカードのスキミング被害をうけた。
交通事情も各国異なるが、フランス、特にパリの渋滞は格別で、マナーも日本に比べ極めて悪い。路上の駐車スペースがなく、相変わらず、バンパーをあてて駐車する。以前、パリ中心地で日本からの出張者を乗せ、新品のポルシェ911のバンパーにあて押して駐車スペースを作ったときは出張者が改めてバンパーの意味を知ったと、写真を撮りながら感激していた。
困った人がいれば助ける文化は、妊婦、そして出産後の妻にとって、住みやすい町となった。フランス人はラテン系のなかでもドライで他人には干渉しないと言われているが、自分の目の前で困っている人がいれば助ける文化は大いに見習うべきである。 また、店や駅ではサービス精神が乏しく、不親切なフランス人と思っていた私達夫婦は、日本ではあまりにもサービス過剰な駅や電車のアナウンスがあたりまえになっていたが、いつのまにか静かなパリが心地よくなっていた。
今はフランスでの生活にも慣れ、家族3人、快適に暮らしている。
注 米資本100%のタイコエレクトロニクス アンプ(株)*に勤務し、2003年9月から、欧州、中東、アフリカのトヨタとトヨタ系列サプライヤー(電子部品)担当として、タイコエレクトロニクス フランスに勤務している。
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