〜社是 「人間尊重経営の実践」〜
 
おじゃまします  ―協豊会 鶴関東地区幹事に聞くー


 
 協豊会広報委員会は10月8日、NOK竃{社において、鶴関東地区幹事
(NOK株式会社 代表取締役社長)にインタビューを行いました。
 NOKさんは、高い技術力に裏打ちされたシール総合メーカーとして成長を
続けられ、シール業界でNO1の地位を堅持されています。経営方針として
「人間尊重経営の実践」を掲げておられ、創業時のエピソードも含めて、
企業経営の取り組みについてお話を伺いました。




鶴関東地区幹事

◆ NOKさんの会社概要と沿革についてお聞かせください。

 会社設立に関しては、休眠会社を買ったことにより登記上は1939年なって
おりますが、事実上の設立は1941年になります。
九州在住の7人が集まって、会社を興して、神戸に日本ベアリング製造として
誕生しました。ベアリングと言っても全くベアリングは製造せずに、いきなり
オイルシールの製造を開始しました。

 1950年に会社が行き詰ったことがありまして、当時株主でもあった私の
叔父が、私の父(鶴 正吾元社長)に声をかけたことがきっかけで、父が
博多から神戸に呼び寄せられて、入社し、そこから事実上の当社の歴史が
始まったということです。その時、皆で必死に頑張って、再建の努力をし、
今に至っております。
 また神戸の会社を再建した後、今度は東京の金町にある別の系列会社を
立て直すことになり、父は東京へ移り、再建後の1951年に両社が合併し、
日本オイルシール工業として経営を開始しました。



◆ 再建当時のお話をお聞かせください。

 当時はかなり苦労したようで、父が神戸の会社を1ヶ年で再建する計画を
持って、銀行に融資を依頼した際、銀行から「こんな大風呂敷広げた計画は
見たことがない。これを達成できるなら、自分は川をさかさに流してみせる。」
と非常に厳しいことを言われた話を聞いております。

 従業員の方々にも再建期間中は、残業代や休出代を払えないことを説明し、
会社一丸となった活動をお願いしたようです。
当時、副社長だった父が従業員に「トマト農家は、来年の収穫に向けて一番
良い種は取っておくものだ。今は会社も厳しいが、必要な資金を将来に向けて
確保するためにも今、手をつけるわけにはいかない。」と説明したエピソードを
受けて、今でも当社の社内報は、「種とまと」として継続して発行されています。

 最終的には、再建を達成し、利益も出たので、要求以上のボーナスを
支給し、皆の信頼を得たようです。



◆ 会社経営に関するお話をお聞かせください。

 再建1ヶ年計画に続き、10ヶ年計画「日本一のオイルシールメーカーに
なろう」さらに9ヶ年計画「労働生産性4倍、給与4倍」という長期ビジョンの
視点に立って経営に取り組みました。
 もうひとつには、「人間尊重の精神」を大事する、特に従業員を大切にする
ということです。    
 言葉を変えると「愛情と信頼」即ち上司の部下に対する愛情、部下の上司に
対する信頼による結びつきという基本理念を持って、経営に取り組みました。
「長期計画経営」、「人間尊重の精神」及び「技術の重視」の3つが、現在の
会社発展の原動力になったと考えています。

 さらに、父の「会社を絶対に倒産させない」という強い意識のもと、「企業に
永遠の命を吹き込む」、具体的には「明日の産業に入る」という多角化経営に
取り組みました。オイルシールに関しては、自動車以外の用途にも広げていく。
またシール以外の明日の産業として、将来発展が望まれる3つの分野即ち
「電子(エレクトロニクス)」「化学」「原子力」に注力し、外国の会社からの技術
導入を実施し、バランスの取れた会社を目指しました。
その結果、現在の売上構成は、自動車分野43%、電子部品32%、一般産業
機械25%と分散しております。
この活動により、今日のAI(Automotive Industry)・EI(Electronics Industry)・
GI(General Industry)という3つの事業の柱を築く事ができ、頭文字をとって、
AGEシューターになろうと今でも活動を継続しています。



◆ グローバル展開に関してお話をお聞かせください。

 1970年代からグローバル化が必要だと着目し、まず1968年に米国に
オイルシール輸入販売会社を設立し、この規模が年間売上300万ドルを
超えたら、米国向け輸出専門工場を作ろう、1000万ドルを超えかつBIG3へ
の納入が実現したら米国に工場を作ろうと計画を決めて取り組みました。
1973年シンガポール工場を設立し、1980年ジョージア州に工場を設立し、
計画的にグローバル展開を目指しました。

 さらに発展途上国への投資に関しては、「将来のグローバル競争に備え、
自分たちで先に海外拠点を作り逆上陸を防ぐ」、「海外外製先という位置付け」
「南北問題(貧困問題)の解決に役立ちたい」という3つの目的を持って、独自
の考え方で進出しました。
具体的には、1977年韓国と台湾に合弁会社を設立し、進出を開始しました。

 当社の特徴である人間尊重の精神と現地の考え方をどのようにうまく調和
させるかが、グローバルでの会社運営における難しさだと考えています。



◆安全・品質への取り組みに関してお話をお聞かせください。

 品質に関しては、品質管理室という組織で、国内外にて仕組み作りや
個別指導を行なっています。室長には元営業本部長になってもらいました。
お客様からの要求に関して経験も知識も充分ですので、よりうまくいく人事だと
考えて、取り組んでもらっています。
特にアジアより欧米において、基本的な考え方の違いもあり、品質をどこまで
重視するかというテーマに関して、我々の考え方がうまく浸透していなくて、
今悩みの種となっています。  
 安全に関しては、ドイツの提携先と共に最優先事項として、積極的に
取り組んでおります。



◆ 関東地区幹事としての協豊会活動についてのお考えをお聞かせください。

 協豊会活動は、双方向コミュニケーションという言葉の通り、非常に意思
疎通が良くて、きめ細かい大変良い活動と思います。
安全や品質に関しても、担当者まかせでなく、各企業のトップが関心を持ち、
非常に啓蒙・啓発されるような活動内容だと思っています。



◆ ご趣味、座右の銘についてお聞かせください。

 健康法として、テニス、水泳、ゴルフをやっています。
35歳からテニスを始めて、今でも週末に友人と一緒にやっています。

 座右の銘ではありませんが、我々は「夢」を描くことが大事だと思います。
会社でも個人においても、まず夢を描き、夢の中から理想を描く、理想の中から
計画ができ、夢を実現できるのだと思います。
また人間尊重の精神を受け継いで、経営を実践していきたいと考えています。
しかしながら昔はお客様の満足と従業員のことを主として考えていれば良かっ
たと思いますが、今は環境が変わってきていると思います。
私が日頃言っているのは、会社の最終目的は「全てのステイクホルダーに
利益と誇りをもたらす存在」になることであり、株主・地域社会・サプライヤーも
含めた他のステイクホルダーにも目配りをしなければならない時代になって
いると考えています。


本日はお忙しい所、ありがとうございました。



             鶴幹事を囲んで
   石塚広報委員長(太平洋工業梶@常務執行役員):左から2人目
   山田広報副委員長(住友ゴム工業梶@常務執行役員):左
     鈴木事務局長:右