グローバル人材育成〜職場力・現場力向上
 
おじゃまします  ―協豊会 青山副会長に聞くー


  去る7月23日に協豊会経営講演会がトヨタさんの本館ホールで行われました。
その当日に協豊会事務局会議室で、東海地区の青山副会長
(叶ツ山製作所 取締役社長)にインタビューを行いました。
青山製作所さんは、日本はもとより、タイ・アメリカ・チェコ・中国の世界5極でグローバル展開し、「ファスニング(締結)」の分野で、ワールドサプライヤーとしての地位を築き上げています。
  本日はお忙しい中、青山副会長には日頃の抱負や協豊会活動についてお聞きしました。

 

青山副会長

◇「青山製作所殿の会社概要について」

 1950年に愛知県江南市で創業し、今年の11月で、お陰様で57年になります。
現在は、1968年に移転した、お隣りの大口町に本社を置いています。
創業当時から、トヨタさんにお世話になっており、現在では99%が自動車用のファスナーです。
トヨタさんの拡大・海外展開とともに、現在、国内に7工場、海外には
4拠点を構えており、国内と海外連結で、2006年度は811億円の売上規模で、従業員もグローバルで3400人を超えました。

物と物を結ぶ事を「締結」といい、それを英語で「ファスニング」と言いますが、その製品をファスナーと呼んでいます。当社で言えば、「ボルトとナット」です。
その他に、タッピングなどの小ねじ、樹脂製のクリップなど、ファスナーと呼ぶものは何でもやらせて頂いているのが当社の特徴です。
冷間鍛造・転造・樹脂成形・表面処理など、ファスナーの製造に関わるコア技術を活かして、お客様の困りごとやコストダウンを可能にする高機能商品を開発して、ご提案していくことを積極的に
行っています。

◇「海外の事業展開について」

 トヨタさんの海外展開とともに、現在、タイ・アメリカ・チェコ・中国と
4拠点で供給させて頂いています。
なかでもタイは、トヨタさんの工場立上げに合せて、他の拠点と比較すると非常に早い時期の1966年に、TMTさんのお隣りに敷地を構えて、現在も、生産しています。
私どもは「ねじ屋」なのですが、実はタイでは自動車のジャッキ・ツールをトヨタさんをはじめ、各社へ供給しております。所謂、だるまジャッキの生産量はお陰様で、世界で1番多く生産している工場になりました。
経緯は、どのサプライヤーさんにも経験があると思いますが、その時の勢いと言いましょうか、当初タイに進出したばかりの頃は、自動車の生産台数からすると、ファスナーの生産能力を満たす仕事が十分無く、困っていました。

私どもの主な仕事は線材の冷間鍛造なのですが、唯一、国内の茨城工場で、現在もですが縦型プレスによる鍛造・板プレスを行っております。
その技術を活用して、トヨタさんからだるまジャッキもやらないかと
声を掛けて頂き、20年ほど前に現地で試作からスタートしました。
現在では、合せて月間10万個以上のジャッキを生産しています。
本業のファスナーも、IMVの立上げに合せて、ラヨーン工業団地に2004年に専門工場を立上げました。

グローバルな課題は何かというと、第1に「人材育成」です。
先ほど従業員は3400人と申し上げましたが、その半分が、海外の人員となっています。
私どもの工程の作業は、従来から「勘コツ」に頼っている作業がたくさんあります。鍛造の金型の段取り・調整・修正、ねじ、転造型のピッチ合せ・調整、設備のメンテナンス等々がそれにあたります。
今まで、海外への展開は、現地スタッフが日本に来て、生産ラインで研修して現地に展開すると言う事で進めて来ました。しかし、海外への製品展開のスピードが早く、現地の新人教育が追い付かないのが現状です。
これは、海外だけではなく、日本でも同じ現象が起きています。
今、社内で私がしきりに言っていることは、「横展」と「標準化」です。
従来から、いろいろ改善はしているのだけど、一つの工程・工場で終わってしまっており、海外事業体へスピード感をもって展開していないと、全社的な成果に繋がりません。工場間格差をグローバルに無くして、全体レベルを底上げすることが極めて重要であり、それが「標準化」にもなるわけです。
職場力・現場力の見える化と横展開を行うため、今年は国内に
GPC
を立上げて
います。どんどん海外からも研修生を呼んで、勉強して、身に付けて帰ってもらい、現地に伝承してほしいと考えています。

トヨタさんのお陰で、成長させていただけるチャンスがまだまだ続く中、社内で常に言っているのは「うぬぼれ・おごりを自戒して、恵まれた環境に溺れることなく、健全な危機意識もってお客様に貢献する。その結果として、会社の成長に繋がって行く」ことです。
足元を固め、問題点を「見える化」して徹底的に改善していく。
この姿勢こそ最も大事にして行きたいと思っています。


 ◇「品質についてお聞かせください」

 当社は、毎日製品を6千万個を出荷していますが、一本の不良も許されないのが、ファスナー(ボルト・ナット)です。万が一、一本の不良が車に組みつけられて、お客様の手に渡ってしまったら、人命に関わる事故につながりかねない。まさに品質は企業の生命線ともいえます。
そういった危機意識・緊張はいつも持っているのですが、昨年は、重品問題を出してしまいました。原因は、異常処置のミスでした。
調べてみると、重品問題につながりそうな工程内の不具合の約6割が、事務所の人間による不具合、事務品質の問題でした。
生産ラインの後工程に不良品を流さない「自工程完結」と、一本の不良も流さない生産技術開発と社員教育で以って、「事務品質」のレベルアップを徹底的に行い、2度とトヨタさんにご迷惑をお掛けしないように、委員会を立ち上げて、全ての部署の事務品質改善に取組んでいます。


◇「協豊会活動について」

 協豊会行事を通してのトヨタさんとの双方向コミュニケーション・会員会社トップとの研鑚・交流は、会社経営の観点からも、私自身の「起動力(原動力)」になっており、本当にありがたい経験です。
春の経営者懇談会では、田原工場で、レクサス・RAV4の「自工程完結」の事例を約2時間もかけて、見学させていただきました。
不良を作らない・流さないということを、ここまで徹底的にやるのかと感じたと同時に、ねじの不良は1本たりとも流せないと思いました。
まさに、「愚直に地道に徹底的に」やられていました。
協豊会の行事は、今後も、こういった緊張感を感じるものであって欲しいし、企画されている協豊会とトヨタさんのスタッフに
感謝しています。


「最近でも新潟の中越地震が起こり、自動車メーカーさんの生産が止まるなど影響がありましたが、リスクマネジメントについてお聞かせください」

海外拠点への移管については、国内とまったく同じ工程を海外へ持って行っています。そのために、国内・海外共に相互に生産を補完することが出来ます。
ボルト・ナットは飛行機で運ぶことが出来、緊急時の対応も問題ないと考えています。


「ご趣味について」
 音楽鑑賞やオペラ鑑賞が好きです。
たまたま当社はチェコに工場があり、出張の合間に本物のオペラをプラハの劇場で鑑賞させて頂いています。忙しい毎日の中で、ほんのつかの間の至福の時間を頂いています。

 

 本日はお忙しい所、ありがとうございました。
 青山副会長さんの益々のご活躍をお祈り申しあげます。

  青山副会長(叶ツ山製作所 社長):左から2人目
   石塚広報委員長 (太平洋工業梶@常務執行役員):右から2人目
   出川広報委員 (日本精工梶@取締役・執行役専務)

   鈴木事務局長