〜『先ず獣身をなし、後に人心を養う』経営の実践〜
おじゃまします ―協豊会 加藤会長に聞くー 協豊会広報委員会は2月20日、鰹ャ糸製作所 本社にて、協豊会 加藤会長( 鰹ャ糸製作所取締役会長 )のインタビューを行った。
加藤会長には、昨今自動車産業の課題である「環境・安全・燃費」への取組みというテーマを中心にお話を伺った。
◆ 小糸製作所殿の会社の沿革についてお聞かせ下さい
当社は、1915年に東京の京橋で個人商店として「小糸源六郎商店」を創業、鉄道院(現在のJR東日本)に、鉄道信号用フレネルレンズを納入し始めたのがスタートでありまして、昨年、創業90年を迎えました。 1936年に、株式会社小糸製作所を設立し、今年が設立70周年になります。 連結売上高は、2005年度で約3900億円の見込みで、自動車産業への依存率は連結ベースで80%強、単独では95%以上です。自動車産業の発展と共に、小糸製作所も発展してきました。 取引先は、トヨタさん向けを主体に、アメリカ・ヨーロッパ・アジアのカーメーカーさんにも広く納入させていただいております。 照明メーカーというのは、「世の中を明るくする仕事」だということと、特に自動車の照明というのは世の中に夜が無くならない限り、永遠に続く仕事だと思っています。 。 ◆ カーメーカーさんは「環境・安全・燃費」への取組みを続けられておられますが、 小糸製作所殿がこれらの課題に対する取組みについてお聞かせ下さい 環境保全の基本的考え方として、会社の経営基本方針に謳っておりますが、「光」をテーマに全てのステークホルダーとの共栄共存をはかることを経営の基本としており、また地球環境問題の重要性を認識して、全ての事業活動において「人と地球にやさしいモノづくり」を追求することを方針としております。 「環境」に対する考え方は二つありまして、一つは製品が環境にやさしいこと、もう一つは製品生産時においても「環境にやさしい」ことを柱にしています。 「環境」や「燃費」にやさしい製品としては、例えばディスチャージヘッドランプは、従来のハロゲンランプと比較して約▲42%の省電力で、クルマの「燃費」を約1%改善出来ます。また、約3倍の明るさを持っておりますので、事故低減にも繋がり、「安全」にも貢献する製品です。 LED標識灯の場合は、長寿命で、更に従来の白熱電球と比べて約▲91%の省電力となるだけでなく、点灯速度が10倍なので、ブレーキランプで使用されれば、後続車が早く認識出来て追突事故低減に繋がります。この点灯速度の早さにより、高速道路で時速100kmで走っていて急ブレーキを踏んだ場合、後続車は制動距離にして4〜5mの効果となります。 製造工程においては「3R(発生抑制・再使用・再生使用)活動」を推進しており、 2004年度の実績を樹脂原料の例で言いますと、 @ 材料統合推進による削減: 前年度比57t削減 A 材料ロスの削減: 前年度比466t削減 B スプール・ランナー量の削減: 前年度比67t削減 C 社内リサイクル化: 再原料化量 合計613t という取組みを行いました。 また、廃棄物削減の取組みとしては、廃棄物の発生抑制と、発生してしまった廃棄物の徹底分別、社内外での再利用化の活動を進めてきました。埋土廃棄物は2003年度にゼロにしています。 ◆ 小糸製作所殿は海外9カ国を含めて、世界4極体制(日・北米・欧州・アジア)を構築されておられますが、グローバル人材の育成に関してどの様なお考えをお持ちですか 専門メーカーとして海外にも出て行かなければならないため、リスクもありましたが、早い時期から進出しました。 当社は、他社に比べて海外駐在や出向者は少ない方だと思います。海外子会社は合弁が多いこともあり、経営やマネジメントは、ある程度現地に任せようという考え方です。立上げ準備などは出張ベースで応援に行っています。 トヨタさんの張副会長が、「その国の人をそこで教育したり、日本に来てもらって教育したりして、国籍に関係なくトヨタ人に教育するんだ」と、よくおっしゃっていますが、当社でも、どこの国の人でも教育や指導で小糸人にするポリシーでやっています。 ◆ 協豊会会長をおやりになられて、これまでの協豊会活動に関して思うところ、また、今後の活動についてのお考えやメッセージをお話し下さい 4年前に、協豊会会長を引き継いだ時、会長挨拶として皆さんの前で「トヨタさんと我々協豊会メンバーの常日頃の仕事は、繊維で言えば『縦糸』で、協豊会活動は、その『縦糸』に『横糸』をさす様なもの。『縦糸』と『横糸』がうまく編まれて強い繊維が出来ます。 たまたまトヨタさんのルーツは豊田自動織機さんで繊維であります」と、お話ししました。(笑) そういうことで、協豊会は、トヨタさんと双方向コミュニケーションをとって、単なる仲良しクラブではなく、お互い切磋琢磨して、勉強することです。その良い例が、テーマ研究会などで、各社が刺激になっています。 また、トヨタさんの調達方針で行われてきた活動、例えば『特別VA』、『緊急VA』、『CCC21』、『品質宣教師活動』、『VI活動』などの、トヨタさんと各サプライヤーとの活動に、『横糸』の協豊会活動がお手伝いできたりするのが良い点ではないでしょうか。 トヨタさんは日本における協豊会の様な活動を海外でも行われていますね。渡辺社長が副社長時代から『双方向コミュニケーション』、『世界一のものづくり』とおっしゃっていますが、名実ともにトヨタさんのグローバル・ビジョン達成を目指して良い方向に進んでいると思いますし、自動車メーカーとしてすばらしいことだと思います。 トヨタさんは当社にとって最大で最良のお客様ですが、コスト・品質・デリバリー・安全・環境などの取組みで最も厳しいお客様だと思います。トヨタさんあっての当社であり、そのトヨタさんの発展とともに当社も発展してきたので非常に感謝しています。 また、協豊会会長をやらせて頂いて非常に光栄に思っています。 ◆ 最後に、ご趣味と「座右の銘」についてお話し下さい 高校から柔道を始めて、会社に入ってからも町の道場や警察で汗を流し、副社長時代まで道場に通っていました。 平成9年の鏡開きの時に講道館柔道六段をいただきました。4年前に脳梗塞になり、ドクターストップでやめました。 座右の銘は、福沢諭吉の言葉なのですが「先ず獣身をなし、後に人心を養う」です。 この意味は、人間は先ず獣の様な体をつくりなさい、その後に人の心を養いなさい、勉強しなさいということです。 ローマの詩人、ユウェナリスの「健全なる肉体には健全なる精神が宿る」と同じです。 これは、人間にも言えますが、会社にも当てはまることです。例えば、モノづくりには設備・機械がないとだめですね。大艦巨砲の機械は要りませんが、企業規模に合った効率的な設備や機械を設置しないといけません。それと同時に、機械を動かすノウハウ、テクニックがなければいけません。ですから、獣身というのはハードウェアで、人心というのがソフトウェアです。ハードとソフトがうまくマッチングして、素晴らしいモノづくりが可能となります。 私はこの言葉を自分にも、又 会社の経営にも当てはめました。 本日はお忙しい所、ありがとうございました。
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