おじゃまします  ―協豊会 石村関東地区幹事に聞く

 協豊会広報委員会は8月22日、旭硝子㈱ 本社 新丸の内ビルディング31階 応接室に於いて、石村社長にインタビューを行いました。
 会社概要、沿革、企業体質強化など昨今の情勢に対するお取り組みや、これからのグローバル展開などを中心にお話をお伺い致しました。

◆会社概要、沿革についてお聞かせ下さい。

【会社概要】

 旭硝子を中核とするAGCグループの売上は約1兆2千億円です。
 事業別の内訳はガラス事業:46%、電子事業:32%、化学事業:20%、セラミックス事業:2%の比率になっております。
 ガラスは、自動車用ガラスや建築用窓ガラスが、電子は液晶テレビやプラズマテレビ用のガラス基板が代表的な事業です。
 規模は小さいですが、ガラス窯に用いられる耐火レンガなどのセラミックス事業もあります。高品質なガラスを安定生産する上で、窯に用いられる耐火物は重要な役割を果たすことから、自社でセラミックス事業を始めました。いわば垂直統合です。現在、セラミックス事業を持っていることが高品質のガラスを製造できるという我々の強みにつながっており、先達の先見の明には感服しています。
 また、「ガラスの会社が何で化学をやっているのですか?」とよく聞かれます。ガラスを製造する原材料の中にソーダ灰という物があり、それが手に入らなくなった時期にソーダ灰を自社で作ろうと決意し、化学事業を始めました。これも垂直統合のひとつです。

 垂直統合を目的として始めた化学の事業ですが、我々はその後技術面でもガラスと化学を融合して来ました。機能材料、機能ガラスが求められる今の時代、化学の技術があることによってガラスの機能が非常に付加されるのです。
 最近の例としては自動車用ドアガラスとして紫外線(UV)カット率約99%カットを達成したガラスを商品化しました。これらはガラスの表面に化学的なコーティング(高性能UV吸収膜)をすることによって紫外線(UV)のカット率を向上させています。これらも化学の事業を持っているからこそ出来る技術であり、まさに我々の強みだと思います。

【沿革について】
 1907年兵庫県尼崎で創業を開始しました。創業者は岩崎俊彌(いわさき としや)です。岩崎弥之助の次男として生まれ、父弥之助は、三菱財閥の創始者兄弥太郎の弟となります。   
 当時、板ガラスの製造に挑戦した人は数多くいたものの、国内での成功例は一つもありませんでした。板ガラスはそれほど困難な事業だったのです。かようにリスキーなビジネスを手掛けて失敗し、三菱の名を汚してはいけない、という考えから、三菱の名は付けずに旭硝子という社名になったと聞いております。
 日本で初めて板ガラスの本格生産に成功したのは1909年。創業から2年掛かっています。その後1916年からガラス窯の耐火レンガを、1933年にはガラス原料であるソーダ灰の生産を開始しており、まさに創業の直後から垂直的に事業を展開しました。

 やがて1956年にはインドに進出、戦後日本企業による海外進出の草分け的存在となり、東京オリンピックの頃には東南アジア(タイ・インドネシア)へ進出しました。
 ヨーロッパへの展開は、1981年にベルギーの会社に資本参加したのがきっかけです。アメリカについては、1980年代に自動車用ガラスでスタートした後、1992年に現地のガラス会社を買収しました。
 このように東南アジアについては合弁もしくはグリーンフィールドの形で始め、ヨーロッパ・アメリカについてはM&Aを含めた形での進出により、現在のグローバル展開を形成しました。

◆ 企業体質強化についてお聞かせ下さい。

 色々な国の従業員が色々な事業に携わっているので、ともすれば遠心力だけが働きバラバラの方向に進んでしまいます。グループ全体をどの様にまとめて行くのかを課題とし、2000年辺りからグループの求心力を高めてベクトルを合わせるための活動を積極的に展開しております。
 その一例として、2002年にグループビジョン “Look Beyond”を掲げました。
この中では、「我々の使命」というものを定めています。具体的には「先を見つめてよりブライトな世界を作りましょう」「将来を見据えて、自分の領域を超えた視点を持ち、現状に満足せず、飽くなき革新を追求し挑戦して行こう」という内容になっています。

 我々はこれら使命に加え、グローバルの舞台で事業展開して行くために、グループメンバー全体での共通の価値観を持とうという思いから、4つの価値観をグループビジョンの中で定めております。
 その中でも、英語では「イノベーション&オペレーショナル・エクセレント」日本語では「革新と卓越」、これこそが最も重要な価値観で企業価値向上の源泉であり、また世の中に貢献出来る源泉だと考えています。
 但し、この革新と卓越を実行するにあたり何をやってもいいかというとそうではありません。共通で守るべき価値観を持たねばならないという理由から、ベースに3つの価値観を示しております。
① ダイバーシティ(多様性)を重視する。
 これは、人種や性別、言語・文化という面で様々な違った物を認め、受け入れるという考え方がグループ全体に必要ということで掲げています。
② エンバイロンメント(環境)
 いくら革新的な技術があっても環境に悪影響を与えてはいけません。環境を重視して行くことが大切であり、これは非常に重要な価値観として考えています。
③ インテグリティ(誠実)
 まさに誠実たれということです。今まさに社会から求められている「高い倫理感に基づきあらゆる関係者と透明・公正な関係を築くべき」ということです。

 例えば、何かあった時に、これやっていいのか?どうしょう?と迷った時はこれら三つの価値観に戻って考えろとグループメンバーに伝えております。

 以上のグループビジョンをベースとした上で、私が社長になった2008年より新しい経営方針をスタートさせました。
 2008年当時のAGCグループの状況を振り返ると、売上こそガラス事業が大きいものの、利益では電子事業、とりわけディスプレイ事業への依存度が非常に高く、グループ全体の70~80%の営業利益をここが占める構図になっていました。
 もちろんそれ自身よいことですが、一方でこのビジネスは変化が激しい。これだけに依存していては、将来の安定性に繋がらないだろうと考え、更に成長するために何が必要かという視点でAGCグループとして「2020年のありたい姿」を示したGrow Beyondという経営方針を打ち出したのです。

【2020年のありたい姿】
AGCグループは、『持続可能な社会に貢献している企業』として
 ・ 差別化された強い技術力を持ち
 ・ 製品のみならず、生産工程・事業活動全般に亘って環境に配慮し
 ・ 新興地域の発展にも寄与する、高収益・高成長のグローバル優良企業でありたい。
この様なありたい姿を定めております。

Grow Beyondでは、このありたい姿を実現するための3つの戦略を掲げました。

  • ① 第2のグローバリゼーション
    既存ビジネスであっても新規ビジネスであっても先進地域はマーケットの成長率が低くなっていることから、成長率の高い新興地域で事業展開することを考えています。
  • ② ガラス技術立社
    ガラス屋なのでガラスの技術を徹底的に追求しよう、ガラスの付加価値を付けることによってよりビジネスを強化して行こう・新たなビジネスを広げていこう、ということです。
  • ③ 環境・エネルギー問題に技術力で貢献
    これは今まで我々が事業として手がけていない分野で新しい事業を始めようということではありません。我々の技術・商品から派生したもので世界環境に貢献したいと考えています。

大きなビジネスチャンスに繋がる「新興市場」「ガラス」「環境」、この3つを強化することで、2020年の姿を目指そうという方針です。

 第2のグローバリゼーションについて少し詳しくご説明します。第1というのは、今まで我々が進めてきた欧米・東南アジアを中心としたグローバリゼーションを指します。この第2のグローバリゼーションは、まさにこれから成長する国や地域、即ち新興市場で新たな事業展開を進めようという意志です。
 その一つの例が現在進めているブラジルプロジェクトです。かつてブラジルに進出したものの失敗をして一旦は撤退しましたが、もう一度ブラジルで勝負しようと決断をしました。約400億円の投資をして、建築用のガラス、自動車用のガラスのフルセットで再チャレンジをします。
 ブラジルは成長率が高い市場であり、トヨタ様もブラジルに相当力を入れられているとお聞きしています。これからオリンピック・ワールドカップという大イベントを控えていることから、まさに第2のグローバリゼーションとして大きな市場であると捉えております。

◆ 安全・環境・品質についてお聞かせ下さい。
 
【安全】
 我々は安全について基本的な考えを持っています。他の会社様の多くは安全第一と掲げられていると思いますが、当社の方針は【安全なくして生産なし!】です。安全第一と言うと1、2、3番と比べる物があるのかという話になりがちですが、安全は優先度をつけるものではなく事業のまず前提という位置づけなのだ、という考えから【安全なくして生産は無いんだ!】というメッセージをグループ全体に伝えているのです。

【環境】
 環境に貢献する商品の代表はエコガラスです。最近日本の住宅で一般的になりつつある普通の複層ガラス、実はこれだけでは十分な省エネ効果はありません。冬の冷たい空気の熱伝導は複層構造にしてガラスの間を空気層とすることで抑えられますが、輻射熱は抑えられません。また夏場の窓辺は太陽光線によりジリジリ暑いですが、この暑さを防ぐには熱線をカットする必要があります。当社はガラス面に特殊金属膜をコーティングしてこれを実現したエコガラスを開発しました。このエコガラスを使えば家庭やオフィスの冷房効率が非常に上がります。この様な商品が快適な生活と環境負荷低減に貢献する環境商品だと我々は思っています。

【品質】
 AGCグループ全体で「AGCグループ品質マネジメント基本要綱」ならびに「AGCグループCSガイドライン」に従って、各部門でISO9001などを活用した品質マネジメントシステムを構築・運用しています。
 また生産現場でもPDCAサイクルを通じた継続的な改善を進めており、生産ラインで品質を造り込むべく取り組んでいます。

◆ 協豊会に対してのご意見をお聞かせ下さい。

 協豊会は、トヨタ様とコミュニケーションを図り、ビジネス環境の状況について常に共通認識をする場であると思っております。協豊会に入らせて頂いてないと、なかなかその様な情報を共有する事が出来ないでしょう。トヨタグループ全体として本来何をサプライヤーに期待されているのか、協豊会会員会社へ色々な情報を発信して頂いています。それらを通じて情報、環境認識の共通化に努めています。
 もう一つ、協豊会幹事の立場として会員の皆様と色々なコミュ二ケーションを築き、サプライヤーとしての様々な問題・悩み(円高、世界経済情勢など)について本音でのコミュニケーションが出来る環境づくりを目指し、皆さんと一緒にやって行ける様、今後も頑張って行きたいと思っております。

◆ 最後になりますが、座右の銘についてお伺いさせて頂きます。

 若い時、上司に言われた「人は力なり」という言葉です。
昔は一人で何でもできると思っていましたが、46歳で子会社の社長になった時、自分一人では何ともならないということを実感しました。その時思い出したのが、「人は力なり」です。その上司からは常々「本当に人は大事だよ!といつも言われておりました。それを実感したのも子会社の社長になってからで、以来この言葉が私の座右の銘であり、現在の経営方針のバックボーンになっています。今はまさに「人は力なり」、人で経営していくことが大事と考え、実践しております。


本日お忙しいところ、ありがとうございました。


石村社長(中央)を囲んで・・・
石塚広報委員長 (太平洋工業㈱ 取締役専務執行役員):右
勝丸広報副委員長 (西川ゴム工業㈱ 常務取締役):左
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