おじゃまします協豊会 小谷関東地区幹事に聞く

 協豊会広報委員会は10月16日(木)、神奈川県川崎市のパイオニオア㈱本社に於いて、小谷代表取締役兼社長執行役員にインタビューを行いました。
 小谷社長には会社概要、沿革、企業体質の強化へのお取組みや、関東地区幹事として協豊会活動へのお考えや思いなどのお話を伺いました。

「会社概要、沿革についてお聞かせ下さい」
◆企業理念◆

 当社は、創業者の松本望が、初めて米国製のダイナミック・スピーカーの音を聞き、大きな感動を覚え、このような素晴らしい音をできるだけ多くの人々にぜひ聞いてもらいたいとの想いから起業したのが始まりです。
 敬虔なクリスチャンであった松本の想いもあり、1938年に福音商会電機製作所という社名で、スピーカーの部品メーカーとして創業しました。そして、1961年にそれまでの部品メーカーから、アッセンブリー・メーカーに大きく業容を転換し、その時に現在のパイオニアという社名に変更しました。1962年に世界初のセパレートステレオを発売し、ここからオーディオメーカーとしての地位を確立していきました。
 創業者である松本の、「スピーカーの音を聞いて感動した」という体験が、当社の企業理念「より多くの人と、感動を」に受け継がれ、さらにそこに込められた、ものを造る以上、今までにない感動を与えたいという松本の想いから、「世界初」、「業界初」の商品にこだわって研究・開発を進めています。

◆世界初の歴史◆
 創業以来76年の間、様々な「世界初・業界初」の商品を市場に導入してきました。
 セパレートステレオに始まり、1975年にコンポーネントカーステレオ、1980年にはレーザーディスクプレーヤー、1982年に業務用レーザーカラオケ、1984年にカーCDプレーヤー、そして1990年にはGPSを使ったカーナビゲーションシステム、1997年にDVDカーナビゲーション、民生用プラズマディスプレイを発売、直近では、車載用ヘッドアップディスプレイや自転車用ナビゲーションを市場導入するなど、常に世界をリードしてきました。

◆体制と売上比率◆
 現在、北米、欧州、東南アジア、中国、そして、10月1日よりブラジルに南米の統括会社を設立し、合計5極に地域統括会社をおいたグローバル体制で運営しています。売上げ構成比は、カーエレクトロニクス事業が70%、ホームエレクトロニクス事業が22%、その他が8%となっています。市場環境の変化により、かつてのホームエレクトロニクスから、現在はカーエレクトロニクスのウェイトが拡大しています。
 また、カーエレクトロニクス事業における市販ビジネスとOEMビジネスの比率は、市販が45%、OEMが55%となっています。


「企業体質強化のお取組みについてお聞かせ下さい」
◆構造改革◆
 リーマンショックのあった2008年に社長に就任したのですが、その翌年プラズマテレビ事業からの撤退という大きな決断をしました。当時、テレビはプラズマと液晶がしのぎを削っており、当初は共存していくものと思っていましたが、液晶の技術が著しく進み、コスト面で苦戦を強いられるようになりました。
 そこで先の環境がさらに厳しくなることを見越してプラズマ事業からの撤退を決めました。売上が2,500億円もの事業から撤退したことで、多くの生産拠点を閉鎖・縮小し、多くの社員が会社を去ることになりました。
 このような厳しい構造改革を一年間で完了させ、企業体質も強化されたので、成長戦略に舵を切ったのですが、その後の東日本大震災やタイでの洪水などにより、なかなか成長路線に乗り切れない状況が続いていました。そして、この9月に新たな決断を発表させていただきました。

◆カーエレクトロニクス事業への経営資源の集中◆
 それは、事業ポートフォリオを見直し、ホームAV機器とDJ機器事業を再編成することにより、今後の成長を見込むことのできるカーエレクトロニクス事業に経営資源を集中することです。グループ全体の再編によるスリム化、財務基盤の再構築によって、成長戦略を支える経営基盤を確立し、カーエレクトロニクス分野での事業展開を推進していきたいと思っています。
 その背景には、カーエレクトロニクス業界の大きな変化があります。今までのカーAVは単体のカーオーディオであったり、ナビゲーションであったりしていましたが、昨今は通信の高速化や大容量化とも相まって、車の外から情報が入ってきたり、また、車から外へ発信したりするようになってきています。車が通信とつながることで、カーエレクトロニクス市場は拡大が見込まれますが、その一方で、通信・ITなどの異業種が入り乱れて参入する大競争時代が到来しています。
 このような環境を踏まえ、当社は、それ以外の事業を切り離してカーエレクトロニクス事業に特化する決断をしました。成功するためには、これまでのナビゲーションシステムやオーディオなどのハード機器と情報サービス、そして周辺機器の三つを組み合わせて強化していく必要があります。
 幸い当社は、「ハード機器」については市販商品で培った信頼・ブランドや技術・提案力に実績がありますし、「情報サービス」については、自社の地図データやビッグデータ収集のクラウド基盤を保有していることに加え、すでに通信メーカーと情報サービス事業に取り組んでいます。また、「周辺機器」についてもヘッドアップディスプレイや光源モジュールなど新領域の商品も持っているので、これらの強みを組み合わせることで、魅力的なカーライフを実現し、成長していけると思っています。
 また、当社は生い立ちが「音響メーカー」ですので、「音」という強みと特徴を持っています。「音」の技術はカーエレクトロニクスでも重要なポイントですので、今後もこの強みをしっかり追求していこうと思っています。

◆OEM事業と市販事業のシナジー効果◆

 パイオニアの強みはもう一つあります。OEM事業と市販事業の両事業をバランス良く行い、シナジー効果を得られているという点です。シナジー効果とは、市販事業はマーケットの動き、ユーザーニーズの変化、技術の変化をいち早くキャッチし、新しい価値として商品に生かすことができ、その新しい価値を車メーカーに提案できます。
 また、OEM事業は、厳しい品質、コストが要求され、特にトヨタ様の品質向上の取り組みは非常に勉強になり、それを市販商品に生かすことができるという点です。
 これが、OEM事業と市販事業の両方をバランス良くやっているシナジー効果であり、パイオニアの強みだと思っています。


「安全、環境などのお取組みについてお聞かせ下さい」
◆安全◆
 当社では、重大な労災を誘発するような職場環境にはありませんが、つまづきや転倒などといった軽微なレベルでの労働災害は、年間数件発生しています。
 そこで、ここ数年は、川越事業所が中心となり、「歩行災害防止活動」に特に力を入れています。それは、トヨタ様で行なっている「ポケテナシ活動※」を当社流にアレンジして取り組んでいます。
具体的には、①ポスターを工場内へ掲示する ②「安全+第一」シールを一人ひとりへ配付し社員証入れに貼付する③ 安全衛生委員会で、社員の出社時にポケテナシの注意喚起を行う、というものです。

※「ポケテナシ活動」
  ポケットに手を入れて歩かない
  携帯の操作通話・ヘッドホンをしながら歩かない
  手すりを持って階段を下りる
  斜め横断禁止、横断歩道・グリーンベルトを歩く
  しっかり左右を確認して横断する

◆環境◆
 環境については、グループ全体で「環境保護基本規定」を定め、開発・生産・調達・流通・販売の各ステージで、方針を決めて取り組んでいます。 特に川越事業所では、「廃棄物にもう一度活躍の場を与える」をテーマに、廃棄処理物を「有価物化」することで、その費用収支を改善することに取り組んでおり、2011年より4期連続の黒字化を達成しています。
 以前は廃棄処理費用が発生していたプラスチック類などを細かく分別し若干の加工を加えることで、専門業者に有価物として売却できるようになり、昨年度は、廃棄処理収支で年間1,500万円以上の黒字を出すことが出来ました。
 ※2013年度:有価物額約2,000万円、廃棄物処理費▲500万円、処理収支約1,500万円
 ※2010年度:有価物額400万円、廃棄物処理費▲1,000万円、処理収支▲600万円
 また、製品についても、環境対応を積極的に推し進めていまして、省エネ製品の開発はもちろんですが、例えば、サントリーさんと共同でウイスキー製造の際の空樽を利用したスピーカーを作っており、数多くの環境賞を受賞するとともに、その薫り高き響きが好評を博しています。

◆品質◆
 当社では、品質を企業の生命線として捉え、開発から生産、流通や販売、アフターサービスまで、それぞれが実行目標を掲げて取り組んでいます。
 OEM事業では、自動車メーカーの厳しい品質基準や高い目標を達成するために、自動車メーカーからも様々なアドバイスを頂きながら、品質向上に取り組んでいます。今期の品質方針は、「品質第一主義に徹する」を掲げ、フロントローディング活動を重点的に行っています。フロントローディング活動とは、新商品の構想確認会、設計計画確認会から、品質技術部が入り、①安全・法規・認証業務の品質保証プロセスの構築 ②ソフト品質の更なる向上活動③新規技術、新規機能、変化点の検証レベル向上による未然防止活動などを行っています。品質目標値としては、ワランティ比率、市場品質、顧客満足度を設定し、OEM顧客ごとの品質目標値を定めて取り組んでいます。

◆品質トラブルに対する企業姿勢◆
 品質といえば、当社には、忘れられない品質危機がありました。それは15年前、1999年8月に起こったカーナビゲーションのGPS受信トラブルです。米国が運用する24個の人工衛星が発信する電波信号で地上の位置を割り出すGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を使ったカーナビが、8月22日午前9時に誤動作を起こすというものです。対象商品は、27万台ありました。当時、コンピュータの2000年問題が社会的に大きな問題となっており、その前哨戦として注目を集めました。
 問題が発覚したのは、誤動作を起こす2年前の1997年。すぐにその対応のための「99Xプロジェクト」を発足させ、誤動作を起こす1年前には事実を真っ先に明らかにしました。
 当時会社は、業績が厳しい時期でありましたが、数十億円の費用が発生する、27万台のIC交換、無償修理を決断しました。これを決断したのは、「世界初の商品を開発・販売する企業責任」、そして、「フェアで何事も隠さない、裏切らないパイオニア」を実践するためです。
 この問題に対しては、新聞や雑誌に社告を出し、ポスター、チラシを配り、カーナビ利用者に直接ハガキでお知らせするなど、2重3重の対策をとりました。一方で、全国の販売・サービス網を総動員し、販売店など取引先の協力を得ながら、電話による問い合わせや修理要請に万全の体制で臨みました。
 1999年8月22日は、朝からテレビ局が当社のカスタマーサポートセンターに来ていました。実際に9時になるとカーナビの画面は、真っ暗になって止まりました。しかし、事前の対応のおかげで、お客様の問い合わせは全くなく、テレビ局は拍子抜けして帰っていきました。
 この苦い経験を契機として、製品開発への対応は勿論ですが、ご購入を頂いたお客様へのインフォメーションやご案内機能を高めるための「カスタマーサポート機能」を強化し、カーナビゲーション商品でのお客様登録の仕組みを構築しました。


「関東地区の幹事さんとして、協豊会活動についてのお考え、メッセージをお願いします」

 他の自動車メーカーともお付き合いをさせていただく中でも、協豊会のような会は他にはありません。トヨタ様の役員をはじめ各社トップも必ず出席され、そこでの情報によって、世界をリードする会社の動き、また世界の情勢がよくわかります。
 この協豊会には、代理の方ではなくて必ず各社トップが出席していることもそれが理由だと思います。また、各社トップとの横のつながりができ、良いコミュニケーションの場にもなっています。このように、我々にとって素晴らしい機会を与えていただいていることに感謝しており、この協豊会がますます発展していただければと願っています。


「ご趣味、座右の銘などお聞かせ下さい」
◆ご趣味◆

 スポーツが好きなので、観戦を中心に幅広く何でも見ていますが、自分ではゴルフをしています。できれば、健康のために週一回はプレーしたいと思っていますが、なかなか難しい状況です。

◆座右の銘◆
 「言行一致」です。
 言ったこと、約束したことは必ず守る、これが人との信頼関係の基本だと思います。また、社員とのコミュニケーションや、全社員が一丸となって取り組める環境をつくることを、常に心掛けています。
 できるだけ現場に出向き、社員とは、フェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションを取るようにしていますが、自分の想いを直接全社員に伝えるには限界があり、一方通行になってしまうことがあります。私の想いが本当にみんなに伝わったのか、ということを確認するまでが私の責任だと思っています。そこまでやらないと意味がないと思います。そのために、出来るだけ多くの機会を設けるようにしています。
 例えば、新しいビジョンが決まった後には、「80人対話集会」と称して、社員をランダムに80~100名程度に分けこの対話会を、40回程度実施しました。しかし、私は40回参加しても、社員は年に1回だけですので、しっかり想いが伝わっているのかが気になります。また、各職場を訪問し5、6人の小グループでの対話会や、管理職との対話会を行い、より多くのコミュニケーションの機会を設けています。



本日はお忙しいところ、ありがとうございました。





小谷社長(中央左)を囲んで・・・
  石塚広報委員長 (太平洋工業㈱ 取締役専務執行役員):中央右
  前田広報副委員長 (㈱メイドー常務取締役):左
  小谷事務局長 :右
   協豊会タイム                                                 
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